悪い教育の先に待ち受けるものは何か
私のいくつかの記事では、たびたび自信が大事であることを何度も提示してきたと思います。
そのための褒め方などを解説した記事も書きました。
逆に、そういうことを怠った場合はどうなるか。
学校での勉強や会社での仕事で欠かせない教育が、悪い方向へと進んだ場合どうなっていくのか。
今回はそのことについて書いていきます。
悪い教育とは
悪い教育と言っても様々な事例があるため、一概にコレだとは言えません。
なのでこの記事では、以前ブログで述べた悪いフィードバックを中心に悪い教育について述べていきたいと思います。
悪いフィードバックとは以下のような行為を指します。
【悪いフィードバックその1:ネガティブなフィードバック】ネガティブなフィードバックとは評価者の行為を責めることを指します。
例1:『その仕事まだできてないの?』
例2:『君が作るものは本当に下手くそだね』
【悪いフィードバックその2:フィードバックをしない】実は、最もやってはいけないフィードバックはネガティブなフィードバックではなく『フィードバックをしない』ことです。
なぜなら、『無関心』であることが一番、状況も変わらないし改善もされない、成長もしないし何も前に進まない行為だからです。
ネガティブなフィードバックは相手を否定します。
仕事や勉強ができない原因は全て本人の責任であることを指摘し、かつ具体的な解決案や改善案を示さない言動を投げかけることがそうです。
その結果、本人は自信を喪失していき与えられた課題に対して積極的な行動をとろうとしなくなります。
フィードバックをしない場合、本人が課題に対して正しい方向性を定めることができず、問題点に気づくことができません。
仮に自分で問題的に気づいたとしても、それに関して何もフィードバックを得ることができず解決できない環境がストレスとなります。
解決できないことを悟ると、これもまた課題に対して積極的な行動をとらなくなります。
つまり、上記の悪いフィードバックを悪い教育の例とした時、それを受けた人は積極的に問題解決へ望む意思を消失します。
わかりやすく言うと『努力しても無駄だ』と結論づけます。
悪い教育の先に待ち受けるものは、問題解決しようとする ”やる気” が奪われた人間を作ると言えるでしょう。
学習性無気力
上記で説明したような状態を『学習性無気力』と言います。これは1967年 アメリカの心理学者マーティン・セリグマンが発表した概念です。
人間は、抵抗・回避が非常に困難なストレスに長期間さらされると、そもそもストレスから逃げようとする自発的行動を起こすことができなくなります。悪い教育を受けた人は、何をしても変わらない・褒められない・努力は無駄だと『無気力を学習』してしまいます。「どうせ何も変わらないんだ」という無気力を、体験から学習してしまうのです。
これを「学習性無気力」といいます。
引用:『宇宙飛行士の採用基準』
山口 孝夫 KADOKAWA / 角川書店 2014-07-10
これは勉強や仕事が不得意な人だけが当て嵌まる例ではありません。
優秀な人でも陥ってしまう症状です。
この学習性無気力によって組織が脆くなることは、NASAやJAXAなどの大きな組織では常識とされています(大きな組織といっても、決して名のある大企業を指すわけでは無い)。
しかし、悪い教育を受けた人の中には『絶対にアイツを見返してやる』という精神から、逆に結果を出す人もいます。
ですが、それは少数の人にしか当てはまらない話なんです。
心理学の研究結果では『突然変異』としてみなされます。
実際、私もその突然変異の1人だったことがありましたが、本人からしてみると『もっと良い教育方法は無かったのかよ』という不満がありました。
そのような指導方法が完全に悪だとは言いません。
ただし、長年スポ根的な指導で成功してきたという監督や上司は ”たまたま” 突然変異によって結果を残せる人を受け持ったから成長しただけです。
決して、その監督や上司の手腕ではないと私は言い切らせてもらいます。
正直、ストレスを与えて指導する方法が良い方法であると私は思えません。
ましてや最悪なのは、そこからうつ病になる可能性も十分にありえます。
というよりも『学習性無気力である状態が、すでにうつ病である』可能性もありますからね。
3. LHと抑うつSeligman(1975)は, 1)LHにおける動機付けの障害,すなわち反応の自発性の低下は,うつ病者の精神運動遅滞,知的活動の低下などにみられる, 2)認知障碍者についても,Beck(1967)は,否定的な認知的構えをうつ病の基本的症状とみなしている, 3)情動的障害,抑うつ気分の増大は,うつ病の基本症状とみなされている,などから,LHは,とくに反応性うつ病のモデルとなりうつと主張している。
引用:人間の学習性無力感(Learned Helplessness)に関する研究Review of the Studies on Learned Helplessness in Humans
著者:鎌原 雅彦・亀谷 秀樹・樋口 一辰
結果が見えるように配慮すること
では、学習性無気力を回避するためにはどうしたら良いか。何も悩む必要はありません。
単純に結果を明示してあげることを意識したら良いのです。
結果を明示すると言っても、具体的な数字等を表示することまでしなくて構いません。
1番簡単な明示方法を挙げるならば『ありがとう』と、お礼を一言するだけでも十分ではないでしょうか。
上記で述べた通り学習性無気力に陥る原因は、何かをしたところで課題がうまく解決できない、または、できているかわからないからです。
もし子供や部下へ指示したい目標があるのであれば、あなたが結果に対して反応してあげることが大事だと私は考えています。
可能であれば、具体的にどこが良かったか付け足すと尚良いですが、とにかくまずは『ありがとう』から意識してみてはいかがでしょうか。
感謝するのもされるのもコストは掛からないし、なにより互いに気持ちいいですよね。
そういう小さなとこからやってみましょう。